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劉 漢文さんを悼む

寄稿 NP0法人気功協会運営責任者 天野泰司

2004年6月20日。禅密功の始伝人劉漢文さんがこの世を去られました。享年84才。 この夏に再びお会いするのを楽しみにしていただけに、急な訃報に思考が完全に止まり、しばらく言葉がでませんでした。 

1999年の年末に来日された折に直接お会いしてから、劉漢文さんと気功協会との交流を毎年重ねてきました。その中で、劉漢文さんは「私は先生ではない」と繰り返しおっしゃっていました。「自然が先生です」「みなさんも私も同じクラスメイトです」「小学校の同級生のように交流しましょう」と。 実際私たちは、毎回大笑いして、楽しく禅密功の神髄を学び、とてもたくさんの素晴らしいものを受け取ってきました。

劉漢文さんとお会いしていると、日に日に子供に還っていって、心も体もほがらかになってゆくのが不思議でした。毎回、小学生 保育園児が参加していたのも素晴らしい縁でした。彼女たちの感想を読むと、本当に素直に受け取っている事がわかります。それに比べると私たち大人は、まず子供に返って、それから学ばなければ本当のことがわからないということなのでしょう。気功は子供に還ることだとよく言われますが、子供に還ることの大切さをその具体的な方法を含め、本当の意味で直接的に示してくれたのが劉漢文さんでした。 

劉漢文さんが教えてくれたのは、曾おじいさんからの医者の家系に代々受け継がれてきた密教の行法を気功として公開したもので、儀式的、形式的な部分を無くし、信仰に関係なくだれもが自分自身で心身の自己調整、自己鍛練ができるように配慮されたものでした。それらの方法を総称して禅密功と呼んでいます。 禅密功はとてもはっきりした源流を持っている反面、とてもリベラルでニュートラルです。これは劉漢文さんの人柄もありますが、禅密功の内容自体が自然の摂理そのままの中身で、無駄な飾り付けや無理なこじつけがほとんど無いことと、そのことに対する大きな自信に支えられているのだと思います。 つまり、ありのままの本当のことをいつも言っているから、わざわざ偉そうにする必要もないし、他の流派と競う必要もないということでしょう。こういう自由な気功は本当に珍しいです。

「禅密功をする人はみんな笑っています。笑っていない人は偽者です。」という話を聞いた時もあります。自分の心の状態を好ましい方向にコントロールする能力が禅密功をしていると身についてくるようで、私も、人相がよくなったと言われることがあります。自然のままにふるまうことから生まれてくる心の明るさ、躍動する命の感覚、自然な思いやりを伴った聡明さ。それらは、禅密功をする人にとっての当然の資質となっているのです。

私たち気功協会の設立から4年間の歩みは、この禅密功の学びに大きく支えられ、導かれてきました。それは、劉漢文さんとの偶然のご縁ではありますが、今振り返ると然るべくして出会ったとしか思えないところがあります。 私たちは、大自然の公法としての気功を深め広めていきたいと願い、気功協会を設立しました。自然の原理を知り、だれもが元々持っている自然の感覚を取り戻していくことが今の時代に必要だと痛切に感じているからです。特別な能力や資質を持った、ある限られた人だけがやることでもなく、趣味のおけいこごとでもなく、だれもが、自分で自分の心身を整え、生活の質を高め、よりよく生きるための、生活の基本ツールとして気功を再整理していこうとしています。

気功はそんなものじゃないという意見も当然あるでしょう。しかし、劉漢文さんが伝えてきた禅密功の内容はまさに私たちが考えていた気功でした。その格式張らない教え方も、形式にとらわれない自由さも、お互いを縛りあわない自由な人間関係も、私たちの活動の良きお手本です。以前から禅密功は知っていましたが、劉漢文さんと直接お会いして、禅密功の真価を知りました。本当に貴重な出会いでした。

劉漢文さんの業績は、単に禅密功という気功の一流派を完成させたというだけにとどまりません。禅密功に流れているのは自然の原理です。人為的なものには矛盾や衝突がおこりがちですが、自然の原理には何にでも通用する普遍性があります。 21世紀を振り返って、あー時代も変わったな、「世界全体が平和で、だれもが自然に助け合って生き生きと暮らしている」と感慨に耽る時、劉漢文という名前を思い出す人が少なからずいるにちがいありません。全体の平和は、ひとりの心身の平和の実現から始まります。その方法と原理を惜しみなく世の中に公開したその人を忘れることはないでしょう。

この世を去られたことはとても寂しくもあるけれども、「私を先生だと思っていつまでも頼ってちゃだめだよ」と一喝されたのかもしれないとふと思いました。空の向こうの方で高らかに大笑いしている声が聞こえてくるかの様です。「ワハハハハハハ… 」と。 そう言えば、亡くなられたちょうどその時間にみんなで輪になって笑っていました。本当に無邪気な大笑いで、天が晴れたような感じでした。 まだまだ、止めどなく、いろんな思いが沸き起こってきますが、ありがたい思いで胸がいっぱいです。劉漢文さん、本当にありがとうございました。そちらの世界でも達者にご活躍下さい。 (2004年6月)
  NP0法人気功協会 ホームページ「気功のひろば」 http://npo-kikou.com/ より転載 


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